半そで、ノーネクタイで出勤しよう
今回は比較的政治性の薄い話題であるである。私はどうすれば一人でも多くの日本人が豊かで幸せな生活が送れるかを真剣に考えている。この世の中は楽園ではないので、聖書に書いてあるような「嘆きも叫びも死ももはやない」世界などありえない。それでもできることから順番に考えてみよう。
ちょうどこの文章を書いている今、まさに夏まっさかりである。去年の夏ほどの猛暑ではないようだが、やはり暑い。私は冬よりも夏のほうが好きなのだが、さすがに35度ぐらいになってくると私もへばってくる。暑さは政治、経済、教育など様々な分野に非効率をもたらす。シンガポールのリー・クアンユー元首相（元顧問相）によると、東南アジアの経済発展に極めて重要な貢献を果たしたものとしてエアコンが挙げられるという。なるほど、確かに暑苦しいと勉学にも仕事にも集中できない。暑さにはそれなりの対策が必要だ。毎日仕事に忙殺されている我々現代人にとって、暑いからと言って仕事を怠けるわけにはいかない。
世界中には男女共に服を着ない素っ裸であったり、女性は外出時に体をすっぽり覆わなければならないなど、日本人から見ればなんとも奇異で非文明的とさえ思える民族がいる。ところがどっこい、我々日本人もあまり偉そうなことはいえない。真夏の日本のサラリーマンたちの服装は文化人類学的に見れば極めて異常で、非文明的である。真夏の日本は熱帯地方とほぼ同程度の酷暑となるにも関わらず、サラリーマンは長袖のシャツを着てネクタイをしめ、さらに長袖の背広を着ている。これではまるで苦行僧だ。これがどれほどの苦行であるか、いちいち説明する必要もなかろう。
これには明治以来の日本人の西洋志向があるのは間違いない。サラリーマンが着るスーツのことを中国語では「西服」というが、とにかくスーツは西洋から伝わってきた衣服である。しかし東京の8月の平均気温は26度、最高気温は38度にも達する。それに対しロンドンの8月の平均気温は17度である。これでイギリス人と同じ服装をするなど奇習としかいいようがない。西洋のものを取り入れるにしても、やはり日本の実情に合わせるべきだ。
熱帯並みの酷暑の中でスーツを着るという奇習には、単に肉体的苦痛のほかにも弊害を引き起こしている。暑苦しい格好をしているとどうしても室内ではエアコンの温度を低めに設定してしまう。21世紀は環境問題を真剣に考えなければならない時代だ。エアコンを使うなとは言わないが、なるべく設定温度を高くするべきだ。
幸い、2003年に電力不足が深刻となったころから徐々に日本でも半そで、ノーネクタイでの出勤が叫ばれるようになった。特にお堅いイメージが強かった役所や官公庁で実践されていることは大きな成果だ。我々日本人はもっと思考を柔軟にすべきだと思う。仕事を一生懸命やることは重要だ。そのためにも真夏には真夏にふさわしい服装をするべきだろう。
ほかにも、我々日本のサラリーマンがより快適な生活を送るためになすべきことはたくさんある。例えばオフピーク通勤。日本の会社では残業が当たり前なので、退勤時間はまちまちだが、なぜみんながみんな午前9時に会社に出勤しなければならないのだろうか。10時でも11時でも12時でもいいではないか。午前9時に出勤しないと仕事の効率が悪くなるというデータでもあるのだろうか。都市部では電車は朝5時から深夜1時ぐらいまで走っていると言うのに、みんながみんな同じ時間に電車に乗ることは極めて効率が悪くないだろうか。業種にもよるだろうが、会社の始業時刻を1時間か2時間遅らせることなど難しくないはずだ。
これまで述べた半そで出勤とオフピーク出勤はその気になれば難しくないはずだ。サラリーマンの快適な生活を実現する上でこの二つよりはるかに解決困難な問題もある。日本のサラリーマンは残業が異常に多い。仕事が楽しくて楽しくてたまらないのであればいいであろうが、そんな人はあまり多くないと思う。家族や恋人と交流する時間も少なくなる。過労やストレスが積もり積もって自発的に自らの命を絶ってしまう人もいる。また、首都圏では通勤に二時間を費やす人も少なくない。往復で4時間、一日6分の1である。もっと自宅から近いところに勤めることはできないのか。だが実際にはこの残業と通勤時間の問題はそう簡単に解決できる問題ではない。通勤時間の長さは、東京の一極集中という問題が背景にあり、日本各地に拠点都市を作ろうと言う計画は失敗した経験もある。
まあそれと比べれば半そで出勤とオフピーク出勤の実行は考え方次第で簡単に実行できるはずだ。我々日本人はあまりにもかた苦しすぎるのではないか。もっと、いかに人生をより楽しむかを考えるべきだ。繰り返しになるが仕事を一生懸命やるのは重要なことだ。そのためにも半そで出勤とオフピーク出勤は即実行すべきである。
